Panic Theatre 海外新作シリーズ Vol.18

公演詳細

イザベル・ドゥ・トレド:作/中村 まり子:訳・演出
「ラウルの足あと」

昨年秋、皆様から絶賛を頂いた「タンゴにのせて」の作家、現在フランス演劇界で最も注目を浴びているイザベル・ドゥ・トレドの感動作第二弾。
この作品はこちらも「タンゴにのせて」の演技で、皆様の絶賛を受けたベテラン・川辺久造に作家自身が送ってくれた
演劇界では大変希有な、素晴らしい、幸せな上演作品の誕生です。
ご期待下さい!

出演:川辺久造(文学座)/中村まり子(パニック・シアター)/大場泰正(文学座)
美術:皿田圭作/照明:日高勝彦/音響:井出比呂之/舞台監督:遠藤幸男
2007年10月17日(水)〜21日(日) 下北沢 「劇」小劇場

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  チラシ1  

 物語はフランス・ブルターニュ地方の海辺にあるカフェで展開していきます。

このカフェを経営するピエール(田村連)。彼は今、長く連れ添った妻・アリス(中村まり子)との離婚問題に直面していますが、妻と2人の子供達を養うために身を粉にして働いてきた生き方をすぐには変える事が出来ず、孤独感に苛まれている妻の気持ちを理解出来ないまま、月日は過ぎて行きます。
 ピエールの老父・マックス(川辺久造)は妻に先立たれ、寂しい思いの中で暮らしてはいるものの、人生の楽しみ方を熟知して、飄々と、残された時間を堪能している愛すべき人物。彼は行く先々でその“突飛な”行動で、時に他人に迷惑をかけ、自分から言い出した「老人ホーム行き」を撤回したり、また「入る」と言い出したり。昔ならした社交ダンスを再開したり、新たにタップ・ダンス教室に通い出したり・・・
 そんな奔放な父親に、真面目一本やりの息子ピエールは時に苛立ちを隠せません。
 一方、仕事に夢中で家庭を顧みない夫に寂しさを隠せないアリスには愛人が出来、彼女は2人の子供を連れ、ついに家を出てしまいます。
 やがてマックスもついに老人ホームへ。 たった1人になったピエールの生活。
 ある夏の始め、町のフェスティバルの日、ダンスに参加するため久々にこの町を訪れた父マックス、そして人手が足りないカフェの手伝いにやって来たアリス。
アリスは姑のマックスに初めて、妻として、女としての自分の苦しい気持ちを打ち明けます。マックスはそんなアリスを優しく諭し、幸せを祈りながらダンス会場へ。
そして、その粋なスタイルのマックスの姿が見納めとなり、彼は大好きなダンスの最中、幸せな気分のままあの世へ旅立ちます。
 生前マックスが老人ホームから息子・ピエールに宛てた手紙・・・
「私はお前の本当の父親ではない。私は若い頃仕事で家庭を顧みなかった。
母さんは寂しくて、耐えて、ある日恋をしてしまった。相手は船員だ。母さんはその男に夢中になった。やがて彼は去り、母さんのお腹には・・・お前がいた。
10ヶ月後、俺はお前に出会った。母さんを許し、お前を本当の息子と思って愛し育てた。俺達はよく喧嘩をした、言い合いをした。その都度喉元までこの事を打ち明けようかという思いが沸き上がり、ついに言えずにいた。お前と私の人生は似た者同士だ。頼みがある、母さんと同じ様に、俺も死んだら火葬にして、海に散骨してくれ。愛をこめて。俺の息子へ。」
 ピエールは父の骨壷に語りかけます。

「明日のこの地方の天気は晴れ。船の散歩には絶好の日和だ・・・」

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