『文学を笑え!!』

 強調しておくが、我々コンビは笑いと同様、文学に対しても真摯であり続けた。なにしろ『文芸漫談』というくらいだ。文学をおろそかにしては成り立たない芸である。
 普通、文学入門書は、“グングン文学がわかる”のが取り柄だが、我々はグングンだけではどうも満足出来ない。理解の速度も重要ではありながら、納得の瞬間ごとにクスクスと笑いが生じないことには、文学の根幹が貧しくなってしまうのではないかと我々コンビは心配しているのである。
 豊かな文学、とよく人は言う。けれども、何がどう豊かであるべきかを示す者はまれである。少なくとも我々は、文学を語ることが同時に笑いを呼ぶという事態を希求した。
それこそが豊かさのあり得べき具体例だろうと考えたからに違いない。
『文芸漫談笑うブンガク入門』(集英社)いとうせいこう氏まえがきより

 ここ数年、書店を訪れると、「小説の書き方」といった類の本がやたらと眼につくのは、小説を読みたい人より、小説を書きたい人の方が多いという、時代の趨勢のなせる業なのであろう。
 実際に観客を前に話をしているときには、「入門書」 を作ろうとの狙いが殊更にあったわけではなく、とりあえず「小説」ないし「文学」を題材に、いとうさんと二人、お客さんの反応を窺いつつ、あれこれ話すのが馬鹿に面白いので、機会を捉えてはどんどんと喋っただけの話である。
 どちらにしても、面白いのは、やはりライブである。少なくとも喋っている人たちにとってはそうである。そして、演じる者が楽しめないのでは、観客だって楽しくないという、ジャズのセッションと同じ原則の下で「漫談」は行われた。
だから、本書を読んで少しでも面白いと思って下さった方は、是非ともライブにいらして欲しいと思います。
『文芸漫談笑うブンガク入門』(集英社)奥泉光氏あとがきより